お役所仕事で公務員が「おもてなし」をする限界

お役所仕事とおもてなし ブログ

今日は、公務員時代に感じたお役所の「おもてなし」の限界について、語っていきたいと思います。

皮肉な意味でのお役所仕事の例

お役所仕事とは、皮肉な意味の言葉です。

融通が利かない対応や横柄な態度での対応などを指すのが一例であります。

たしかに、お役所だからと言って、失礼な対応が許されて良いわけがありません。

だから、研修などを通じて、役所も接遇を高めているのですが…。

接遇を高めることはできるが…

お役所であっても、接遇を高めることはできます。

  • 感じ良く市民と接する
  • ハキハキと明るく話す
  • 専門用語を避け、平易な表現に努める
  • 心を込めて、やりとりをする
  • 成功や失敗エピソードを職員間で共有する
  • 各種研修の機会を通じて成長する

これらはできるのですが、現実的には民間ほどの裁量の余地はありません。

曰く、ホスピタリティの話になると、悪い例として必ず挙げられるのが、お役所。

「まさにお役所仕事。だから役所はダメなんだ」

そんなことを平然と言い放つ著者もいたりします。

しかし、それは本当でしょうか。

昭和ならいざ知らず、令和の今日において「適当に市民の相手をすれば良い」という不文律が存在するお役所は存在しません。

そんなことはもう通用しないことは、若い職員を筆頭に理解していますし、現に研修の機会も設けられているのです。

また、言うほど民間のサービスは毎回感動ものなのでしょうか?

それは「違う」と、はっきり言えます。

封じられた必殺技

行政機関は実際のところ、クレーム対策のための必殺技が封じられており、歯痒い思いをしています。

特に、「顧客の選別」と「代替案の提示」ができないのは痛いです。

(1)顧客の選別

売買契約は自由です。

故に、誰に何を売るか決めることもまた自由です。

ところが、行政機関ではこうはいきません。

職員に罵声を浴びせ続けるクレーマーのような人を出禁にすることはできないのです。

極端なことを言えば、職員に刑事上の傷害を負わせたような人ですら、行政機関の利用を拒否することはできません。

「もう二度と、うちの店を利用しないでください!」と言いたくても言えないのです。

また、民間のように、高価格帯にしたり一見さんをお断りしたり、敷居を設けてマナーや属性の良い人を顧客にする囲い込みの戦略も当然できません。

そうすると、必然的に、マナーやモラルの悪い人も多く相手にしなければいけないことになります。

良い属性の顧客を囲い込むという事前の対策もできないし、最悪、取引を断るという最終手段をとることもできない…。

なかなかつらいのです。

(2)代替案の提示

さらに言うと、クレームが生じた時に代替案の提示も出来ません。

「コーヒーが冷めているじゃないか!」というクレームに対して、新しいコーヒーを用意しつつ割引クーポンやちょっとした食事類の提供を民間ならできるでしょう。

ところが、お役所は当然できません。

なぜならば、特定の国民に対して特定の利益(物)を与えるとしたら、それは行政行為になり、法律の根拠が必要になるからです。

だから、お詫びの品を与えるなどして、クレーム客を常連客にするといった芸当はできないのです。

せいぜい、「すみません」と謝ることしかできない宿命なのです。

幼稚な人への相手は疲れる

以上の理由により、行政機関の特質上、民間が行えるクレーム対策の手が封じられており、現実的には「おもてなし」の提供に制限がかかっているのですが、もう一つ言わせてください。

それに輪をかけて、私が実際に応対する上で、幼稚とも思える人が多すぎるのではないかと思うことが多々ありました。

典型的なのは、自分の要求や要望が叶わないと知るや否や怒鳴りだす人々です(最初から怒っている人もよくいます)。

決まって「なぜだ!」と怒り出しますが、それが法律の規定であれば従うしかないではないではありませんか。

逆にどうにかしたいと思うのであれば立法府に文句を言うべきなのであって、執行機関に文句を言っても意味がありません。

法律に従って事務をこなすところに、法律の文句を言っても仕方がないということが分からないのでしょうか。

それが電話口であれ対面であれ、感情的になる大人の多さに呆れたのが、公務員1年目の私でした。

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